ChatGPT・Claude・Geminiの違いと選び方|法務業務での比較入門
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
契約書の要約を試すだけなら、ChatGPT、Claude、Geminiのいずれからでも始められます。ところが、会社の契約書を継続して扱う段階では、文章の読みやすさだけで導入先を決めるわけにはいきません。契約プラン、入力情報の利用条件、社内資料へのアクセス権限まで含めて比べる必要があります。
事業部が個人アカウントで試した結果と、会社が契約する環境での結果は、同じサービス名でも異なります。利用するモデルや機能に加え、接続する資料や管理者の設定も変わるためです。法務担当者が比較するときは、「どのAIが一番よいか」という問いを、実際に任せたい作業と、その作業に必要な情報へ分けると判断しやすくなると考えています。
サービス名と利用するモデルの違い
ChatGPTはOpenAI、ClaudeはAnthropic、GeminiはGoogleが提供しています。三つとも、文書の要約、文章の下書き、調査や資料整理などに利用できる生成AIサービスです。ただし、サービス名だけでは、選択できるモデル、入力できるファイル、利用回数、外部サービスとの連携範囲までは決まりません。
同じサービスでも、プランや管理者設定によって使える機能が変わります。新モデルが発表された後も、すべての利用者に同じ時期・条件で提供されるとは限りません。比較の記録には、実施日、プラン、モデル名、検索や外部連携の利用有無を残してください。名称だけを並べた比較では、後日同じ条件で再確認できないためです。
ChatGPTでは、ファイルを添付して内容を質問するほか、対応する接続先と管理設定の下で社内情報を参照できます。OpenAIのCompany Knowledgeの説明でも、利用には対応する情報源や権限が必要とされています。導入時には、普段の契約書と社内規程をどのように参照させるかが比較項目になります。
Claudeでも、資料を渡した文書作成や、対応するコネクタを通じた業務情報の利用を検討できます。長い契約書を扱う場合には、末尾の条項や別紙まで参照しているか、修正案が定義条項と矛盾していないかを実際の出力で確かめてください。「長文に強い」という評判だけでは、特定の契約書を正確に読めることの裏付けにはなりません。
Geminiは、Google Workspaceでの利用と、個人のGoogleアカウントでの利用を区別して検討します。Gmailやドキュメントなどを中心に業務を行う会社では、既存の作業場所から利用できる機能が選定理由になり得ます。一方、必要な機能が自社の契約に含まれるか、管理者が利用を許可しているかは別途の確認が必要です。
三つのサービスにできることは重なっています。固定した得意・不得意の順位よりも、自社が使う環境で、対象資料を適切に参照し、必要な成果物を作れるかを比べる方が実務に即していると考えます。
学習利用と保存・共有条件の確認
入力情報の取扱いは、「無料か有料か」だけでは判定できません。有料の個人向けプランと法人向けプランは、適用される条件が異なる場合があります。また、モデルの学習に使われないことと、会話や添付ファイルが保存されないことも別です。
2026年11月7日に確認したOpenAIの法人向けプライバシー方針では、ChatGPT Business、Enterprise等やAPIの入力・出力を、既定ではモデルの学習に利用しないと説明しています。保存期間の設定や組織内の管理権限については、利用するサービスに応じた条件を確認する必要があります。
Anthropicも、商用製品のデータ利用に関する説明で、Claude for WorkやAPIの入力・出力を既定では学習に使わないとしています。ただし、利用者がフィードバックを送る場合などには、別の取扱いが示されています。通常の入力に関する説明だけを読み、フィードバック送信の条件を見落とさないようにしてください。
Googleは、Google Workspace with Geminiの説明で、許可なくドメイン外の生成AIモデルの学習や人によるレビューにデータを用いないとしています。この説明が、自社の利用するアカウントや機能に適用されるかを確認する必要があります。個人向けGeminiの条件へそのまま当てはめることはできません。
いずれのサービスでも、確認対象は入力本文だけではありません。添付ファイル、会話履歴、保存されたメモリ、外部サービスから取得する情報、共有リンクによる公開範囲も対象になります。外部のアプリやコネクタを追加する場合は、その提供者へ渡る情報と、その提供者の利用条件も確認してください。
秘密保持契約で利用先や再委託先に制限がある資料は、学習利用の除外だけでは入力の可否を判断できない場合があります。個人情報を含む場合も、利用目的、委託関係、提供先、本人との関係などに応じた確認が必要と考えられます。社内の利用規程と取引先との約束に適合するかを、性能評価とは分けて確認することが必要です。
同じ契約書による比較検証
比較には、会社が利用を認めた、秘密情報や個人情報を含まない資料を使います。取引先名を伏せても、案件の経緯や金額、記載の組合せから当事者を特定できることがあります。実案件を使う場合は、伏字にするだけで入力できると判断せず、資料全体の内容を確認してください。
最初の課題は、一つの作業に絞ると結果を比べやすくなります。契約レビューであれば、依頼する側の立場と、確認する条項をそろえます。利用者ごとに異なるメモリや過去の会話が影響する場合は、その条件も記録します。
次の契約書を、委託者の立場で確認してください。
対象は、損害賠償、再委託、契約解除の条項です。
各条項について、該当する条番号と原文、条項の要旨、
委託者の懸念点、追加で必要な事実を分けて示してください。
資料に書かれていない事実は補わず、不明と記載してください。
法令や判例を挙げる場合は、確認できた出典を示し、
確認できていない場合はその旨を明記してください。
回答は人間が確認するための下書きとしてください。
【会社が利用を認めた検証用の契約書本文】
この指示だけで正しい回答が保証されるわけではありません。人が原文と出力を照合し、条番号、引用箇所、定義、例外、別紙の参照が合っているかを確認します。出典のURLが付いていても、そのページが実在し、回答の根拠となる内容を含むかまで読む必要があります。
評価項目は、少なくとも次のように分けると比較しやすくなります。
| 評価項目 | 人が照合する内容 |
|---|---|
| 原文の把握 | 条番号、引用、別紙、但書の正確さ |
| 論点の抽出 | 見落としたリスク、資料にない事実の補完の有無 |
| 文案の品質 | 修正の必要性、定義や他条項との整合性 |
| 業務の負担 | 確認・修正に要した時間と追加質問の回数 |
一回の回答が読みやすかったことと、日常業務で確認の負担が減ることは同じではありません。複数の検証用資料で試し、誤りの内容と修正に要した手間を残すと、導入後の利用範囲も決めやすくなります。
業務への適合と導入後の見直し
社内資料を探す仕事が多いなら、検索対象とアクセス権限、回答から原資料へ戻れるかを重く評価します。契約書の修正が多いなら、条項間の整合性、出力形式、担当者が修正案を確認する手順を中心に比べてください。既存のグループウェアとの連携は便利でも、参照できる資料の範囲が広がり過ぎれば、権限設定を見直す必要があります。
費用についても、月額料金だけで比較すると実際の負担を見落とします。必要な人数、使用量に応じた追加費用、管理機能の対象プラン、担当者が確認・修正する時間を含めて検討してください。利用上限に達した際の挙動や、希望する機能の提供地域も、日常業務を止めないための確認事項になります。
導入時には、入力できる情報、許可する連携先、出力を確認する担当者、相手方へ送る前の承認者を決めておく必要があります。AIが作成した文案を自動で外部へ送る機能を使う場合は、下書き作成とは別に操作範囲を定めてください。法令や判例の調査結果、契約上の判断、外部へ示す回答は、人が根拠を確認して確定させます。
モデルや規約、管理機能が変わったときには、比較の前提も変わります。実施日と利用条件を残した検証資料を再利用し、変更点が自社の作業へ及ぼす影響を確認してください。一つのサービスへ決めた後も、利用範囲を固定し続けず、確認できた性能と管理条件に合わせて見直すことが適切と考えます。